日産の電動化戦略のひとつ、e-power。
エンジンで発電し、モーターで車両を動かすという斬新な発想で給油はガソリン、走りはEVというトヨタ、ホンダとは違う電動化戦略を新たに作り上げました。
そのe-powerはモーターが原動機ですので、ガソリン車のようにCVTなどのトランスミッションの代わりに減速機を積んでおり、日産が主要顧客のジヤトコは今後先細りなのではないかという予想がありました。
ところがそのジヤトコがe-powerに関与する可能性が出てきました。

今回はジヤトコの新たな戦略についてです!
好調なe-power!ジヤトコは不在
1位[5位] 日産ノート 6,626台(111.1%)
2位[14位] 日産セレナ 2,577台(74.5%)
3位[28位] 日産キックス 1,200台(52.1%)
4位[34位] 日産アリア 811台(ー%)
5位[41位] 日産マーチ 509台(89.3%)
6位[44位] 日産エクストレイル 425台(64.8%)
※[]内は総合順位、()内は前年比
2022年5月の新車販売で5位に輝くノート。
現ノートの全グレードはe-powerとなり、ジヤトコ製CVTは積まれていません。
そのほかの車種もe-powerの設定が多く、日産車におけるジヤトコ部品採用比率の低下が目立っており、e-power向けの減速機、さらに発電用エンジンは愛知機械工業という別の日産系企業が生産しています。
そんななか、アリアにジヤトコが部品供給を開始するというニュースが注目を集めました。
引用元:ジヤトコがEV事業で“初日” 日産「アリア」に減速機
アリアに使用される減速機のパーツを供給するというのです。
ジヤトコのAT, CVTのラインナップに減速機が追加!大幅な方針転換
これまで日産の電動化戦略は大きく3つありました。
・EV
・e-power
・ハイブリッド
日産もエクストレイルなどにハイブリッド車両を用意していた時期があります。
ただ、このエクストレイルハイブリッドでクラッチから異音がするという市場不具合が多発し、日産はハイブリッドを電動化戦略から除外しました。
燃料がガソリンの為、チャージは容易で扱いやすく、燃費も良いe-powerが台頭した結果、ジヤトコはその好調の波から取り残される形となりました。
このままでは先細っていく、と社員は悲観し、特に若い社員達には去っていく人も見られました。
そんなCVT大手のジヤトコが減速機にもシフトするということは大きな方針転換です。
加えてeアクスルなる新機種を打ち出しました。

ジヤトコの切り札、eアクスルとは?
ジヤトコが開発、量産を予告したeアクスルとは、モーター、インバーター、ギアボックス (減速機+ディファレンシャルギアなど)から構成されるユニットです。
発注者であるカーメーカー側からすれば一回の発注で多数の機能を持つユニットを入手でき、受注者であるサプライヤからすれば、高付加価値の製品を販売することが出来ます。
2030年代に年間500万台の販売目標ということは開発はもちろん、受注にも自信があることの裏返しです。
引用元:ジヤトコ、EV基幹装置「eアクスル」 年500万台量産へ: 日本経済新聞
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開発に課題は?
今のジヤトコは日産のトランスミッション部門が元となっており、トランスミッションから変速機能を取り除いた減速機は比較的開発に大きな問題はないでしょう。
また、ディファレンシャルギアはトランスミッションの一部品でもあり、こちらも問題はありません。
ところが、モーターやインバーターはそうはいきません。
モーターはエクストレイルハイブリッドで取り扱った経験があるとはいえ、市場で失敗していますし、インバーターに至っては取り扱いさえありません。
これまでのようなCVTの新たな機種の開発とは訳がちがいます。
容易にはいかないでしょう。
専門組織の立ち上げ
これまでジヤトコがEV, e-powerに関わってこなかったのは、関われなかったというよりも時期を見越していた感があります。
e-powerもハイブリッドの様に失敗して消えていく可能性を考慮し、容易に関わらないようにしていました。
ところが現在、日産で国内販売一位のノートはもうe-powerしかありません。
ジヤトコはeアクスルの開発が今後の事業継続に必須である、すなわちe-powerへの参画に本気になったとも言い換えられるでしょう。
さらにジヤトコはeパワートレイン推進部を新たに発足させ、EV, e-power向けの減速機などの開発を専門に行うと発表しました。
ジヤトコ、「eパワートレイン推進部」新設 日産の電動車シフトへの対応力強化
ジヤトコの本気度を見て取ることが出来ます。
これまでジヤトコ内では、電気部品はあくまでパーツの一つでしたが、今後は開発部門のみならず、品質や製造など全社的に電気に精通していく必要があります。
「元」ジヤトコ市場不具合担当としては、後輩たちの苦労を案じるとともに大いに勉強して欲しいところです。
再度、唯一無二の存在になれるか?
CVTではジヤトコ、アイシンAW (現在はアイシンと合併)が2強です。
e-アクスルでは日本電産、ボッシュなども競合となることが予想され、愛知機械など日産グループ内での競合もありうるでしょう。
ジヤトコがこれまでのようにシェアNo1となれるか、ジヤトコの実力が問われます。
特に日本電産は既にeアクスルを販売しており、一日の長があります。
未だ黒字化に至っていないとはいえ、今後も需要増が予測されるeアクスル分野はさらに競争は激化していくでしょう。
熾烈な開発競争は激化するほどユーザーに良いものをもたらします。
1ユーザーとしては大変楽しみです。
引用元:日本電産「eアクスル」上方修正、永守会長が会見で語ったこと
おわりに
カルロス・ゴーン会長の逮捕・逃亡劇以来、悪目立ちすることもあった日産ですが、プロパイロットやEVの軽自動車「サクラ」の販売などやはり高い技術も目立ちます。
ジヤトコは元日産として日産同様の高い技術を示すことが出来るでしょうか。
今後も動向から目が離せません。

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