ジヤトコは潰れるのか?元自動車エンジニアの視点から

自動車業界

元は日産自動車の一部で、現在は大手日産系トランスミッションメーカーとして知られるジヤトコ。

そのジヤトコをめぐって日産と日本電産の駆け引きがあったことも世間をにぎわせました。

EVにトランスミッションは不要とされており、潰れるのではとの懸念を元エンジニアの視点から検証します。

ジヤトコとは

日産、三菱、スズキなどのカーメーカーにトランスミッションを納入しているいわゆるティア1の大手サプライヤです。

トランスミッションでも、特にCVT (無段変速機)を強みとしており、1999年、世界初のトロイダルCVTの量産に成功したり、2009年には世界最大の変速比幅となる「副変速機付ベルトCVT」を開発したりと技術力にも定評があります。

さすがは「元」技術の日産といったところでしょう。

日産の電動化戦略に乗り遅れた?

リーフなどのEV、またノート、エクストレイル、セレナなどでも発売されているe-powerにジヤトコ製トランスミッションは採用されていませんでした。

特にEVではジヤトコ製トランスミッションではなく、愛知機械という別の日産系サプライヤ製の減速機が採用されており、ジヤトコがつぶれるのでは、という不安の声はこれらの事実から生じたものでしょう。

唯一、エクストレイルのハイブリッドにジヤトコ製トランスミッションが採用されていましたが、クラッチ締結時にキュッという異音が鳴る、という声が多く聞かれ、それ以降日産がハイブリッドからe-powerに注力したこともジヤトコがつぶれるという不安の声を後押ししたものと思われます。

日産はジヤトコから愛知機械に資本をシフトさせるつもりなのではないか、と。

私がジヤトコに在籍していた期間はまさにこの時期でした。

日産はリーフやe-powerで好調なのに、ジヤトコ製トランスミッションは使われていない、今はフル生産できているけど、将来は・・・という声が多かったです。

それも世代によって受け取り方は様々で、50代の方々は「ま、自分が定年までは大丈夫だろう」と楽観的でしたが、より若い世代で悲観的な声が多く聞かれました。

ジヤトコで正社員が辞めることはまれでしたが、去っていく社員は若い世代が多かったです。

生き残りをかけた新事業

ところが、日産の電動化戦略に乗り遅れた、というのはもう過去の話です。

これまでAT、CVTが主力であったジヤトコですが、新たに減速機向けの生産を開始しました。

既にジヤトコ製部品を搭載した減速機が日産アリアに採用されています。

また、EV向けのe-アクスルを開発すると発表されており、それにともないe-アクスル開発にリソースを注力しやすくするよう、組織まで変更するという気合の入れようです。

2025年には市場に投入、2030年には年間500万台という具体的な目標まで発表されています。

e-アクスルは駆動用モーター、インバーターに減速機などを一体化したモジュールで、ガソリン車、ディーゼル車におけるエンジンのような自動車の主要部品です。

単なるパワートレインであるAT, CVTと比較しても数段開発、生産の難易度は上がることでしょう。

この発表で重要な点は減速機が入っていることです。

ジヤトコは今後エンジン車向けトランスミッションだけでなく、EVやe-power向けの減速機も提供できるようになるということになります。

おわりに

2022年までのCVT総生産台数が5200万台と24年間もの間、6秒に1台を作り続け、さらにトランスミッションの総生産台数は1億2000万台と途方もない数を生産してきたジヤトコ。

今後もEVの市場は広がっていくと見られており、ジヤトコが電動化戦略に乗り遅れたというよりは、機が熟するのを待っていたように見え、潰れるとは思えません。

ただ、マレリやタカタの例もあり、何が起きるか分からない世の中です。

収拾させられない深刻な不具合や粉飾決算などが万一あった場合、ジヤトコといえども明日は分からないでしょう。

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引用元

ジヤトコ、EV基幹装置「eアクスル」 年500万台量産へ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ジヤトコ、“虎の子”歯車で電動アクスル参入へ メディア初試乗 | 日経クロステック(xTECH)

日産 アリア、減速機にジヤトコ製部品を採用 | レスポンス(Response.jp)

ジヤトコ、EV部品を初供給 日産「アリア」減速機に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ニュース・お知らせ|ジヤトコ株式会社 (jatco.co.jp)


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