各々の業界や会社でしか通用しない特殊な用語というものはどこでもあるものです。
そんないわゆる業界用語の中で、自動車業界なら知っておかないとまずい用語というものもあります。
今回はその業界用語で最も有名な物のひとつ、TP規格についての話です。

TP規格とはトヨタ規格です!
TP規格とは
TP規格とは業界の巨人、トヨタとプラスチックボックス製造大手のサンコーで作ったトヨタ向け規格の箱を意味します。
通称トヨタ箱などとも呼ばれ、通常トヨタグループに部品を納入する際はこの箱に入れ、通い箱として使用します。
TP362というようにTPの後に数字が入り、箱のサイズを示します。
TP①②③の順に下記図のように示します。
例としてTP362であれば、1番目の数字である3が①のサイズを、2番目の6が②のサイズを、そして3番目の2が③のサイズを示しており、型番で箱のサイズが分かるというわけです。

なぜTP規格が必要なの?
TP規格に則ったTP箱、TPコンテナの優れたところは下の図の様にサイズの異なる箱でも隙間なく詰め込めるため、輸送効率を落とさないという点です。

自動車を作るには様々なサイズの部品が大量に必要であり、その様々なサイズの部品を大量に輸送しなければなりません。
たとえ小さなスキマでも、積み重なれば膨大なムダとなります。
トラックに製品が詰め込まれていない、空きスペースが大きいことを良く「空気を運んでいる」なんて評されます。
徹底的にムリ、ムラ、ムダをなくしていくトヨタらしいやり方と言えます。

他のメーカーの規格はないの?
マツダはトヨタにおけるTP規格と同様にマツダ規格があります。
他のメーカーは規格はありませんが、TP規格が使われることが多いです。
理由としてTP規格そのものが優れているということと、トヨタ向けに大量に生産されているため、値段が安価になりやすいためです。
私がパッケージングエンジニアをしていたころは、この箱に手を焼きました。
海外生産の場合、段ボールで日本に輸入されるのですが、カーメーカーは段ボール納入が嫌いです。
カーメーカーの生産ラインは戦場です。
一秒を争っています。
そのラインで段ボールの開封などしていられないというわけで、まず段ボール納入は認められませんでした。
また、たとえ撥水性の段ボールでも水が染み込むことはあり、強度の問題もありました。
積み上げた段ボールがぐちゃっと崩れてしまうと、その製品は使えなくなるため大損です。
プラスチックボックスならばそういった心配はないので、リスクヘッジの観点からも段ボール納入は出来ませんでした。
新機種立ち上げのTP箱手配の手順
国内生産の場合
新規ライン立ち上げ前にカーメーカーから送られてくる製品要求数に従って、TP箱を購入します。
1つの箱に入れる製品の数はいくつ、生産工場から納入先工場までの道程1回転で何日、等々を計算して、発注します。
これも数が多いと分納などになり、関係各所への連絡も大変でしたが・・・。
そしてやってきたTP箱を製造ラインに送り込み、その中に製品を入れて出荷です。
海外生産の場合
国内生産と同じく、カーメーカーから送られてくる製品の要求数に従い、TP箱を購入します。
国内生産と違う点は、国内工場を介さないので、箱の回転率が若干高い点とデポでの作業が発生する点です。
カーメーカーの納入先工場近隣のデポにて、段ボールの開封、フラップのカットを行ってもらい、口の空いた段ボールごとTP箱へ入れます。
そのあとはダンプラ付きのビニールカバーをかぶせ、納入します。
すると、納入先ではビニールカバーをめくるだけで製品が取り出せるというわけです。
このデポでの作業がまあ不評で、毎度お願いしに先方へお伺いしておりました。
立ち上げ初期には、パッケージングエンジニアとして作業指導に伺ったことも数知れずです。
新機種立ち上げ時のルーチンの一つでした。
おわりに
こうしたカーメーカーや部品メーカーの努力にもかかわらず、最近では自動車価格の値上げのニュースがありました。
理由は鋼材など部品価格の上昇ということですが、小麦など食料品なども全般的に値上げされており、有難い話ではありません。
合わせて賃上げの話もあれば良いのですが、明るいニュースも聞きたいものですね。

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