自動車エンジニアの視点から見る池袋暴走事故

自動車業界

池袋で発生した自動車暴走事故について、2021年9月17日、旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長の禁固5年が確定しました。

飯塚元院長が頑としてアクセルとブレーキと踏み間違えたのではないかという指摘を受け入れず、車が原因だ、自動車メーカーは高齢者でも安全な車を作ってほしいなどと発言したことからも注目を集めました。

車には本当に問題が無かったのか?

裁判では飯塚元院長の運転操作ミスを原因と認定しました。

判断材料としてはトヨタ側が提出した車両のデータと思われます。

自動車は飛行機と同じように事故が起きた際の解析用にブラックボックスを積んでいます。

このブラックボックスは常に車両データを記録しており、D、Rなどのレンジ、車速、アクセル、ブレーキなど様々な情報を取得し続けています。

なにかしらのエラーを検知した際はその検知時からさかのぼって数秒間のデータをロックし、上書き不可として保存しておきます。

あれほどの事故ですから、本件でも同じようにデータが残っていたことでしょう。

アクセルとブレーキについてはONかOFFかのデータが残ります。

ブレーキペダルをほんのちょっと踏んだだけでも、ブレーキランプがつきますよね?

あれらはペダルであり、スイッチなのです。

また、どの程度踏み込んでいるかも記録として残ります。

本件のデータにはブレーキはOFFですが、アクセルはON、さらにかなり踏み込んだ記録が残っていたのでしょう。

裁判官はそのデータから飯塚元院長が踏み込んだのはブレーキではなく、アクセルだと判断し、事故の原因は車でなく運転者の操作と認定したと思われます。

やはり車に異常はなかったのでしょう。

意外と多い踏み間違い

管理人は自動車業界で長く市場不具合の調査をしていました。

時には不具合の一報から、不具合を起こしている車を調査しに向かったこともあります。

アクセルを踏んでいるのに車が動かない!ブレーキを踏んだのに、車が動いた!という申し立ては割と良く見かけました。

最近でもコンビニに車が突っ込んだという事故を見かけますが、アクセルとブレーキの踏み間違いが原因と思われます。

そもそもアクセルとブレーキは電子回路だけでなく構造から別物なので、ブレーキを踏んだのに車が暴走したなどありえないのです。

例としては、蛇口をひねったのにガスが噴き出すようなものです。

昨日まで問題無かったのに、ある日突然こんなことは起きないでしょう。

ただ、冒頭の図のように、第3者から指摘されると、あっそうなの?と気づかれることが多いのですが、飯塚元院長がなぜあんなに意固地であったのか、我々には知る由もありません。

おわりに

自動車を運転される方は一度ならずともひやりとした経験があるかと思います。

運転操作が原因の場合もあるでしょうし、自動車に原因がある場合もあるでしょう。

交通機関を作る者の責任、とはホンダ創業者の言葉ですが、ホンダに限らず自動車業界では品質第一、ゼロディフェクトと事あるごとに耳にします。

運転ミスは老若男女問わず発生しうるものですが、ミスをするかも知れない、という教習所でまず習う「かもしれない運転」をいつまでも心掛けたいですね。

引用元

元院長、禁錮5年の実刑確定 控訴せず、収監の見通し―池袋暴走:時事ドットコム (jiji.com)

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