世界のトヨタグループに属する日野自動車。
その日野自動車でエンジンに関して長年にわたる不正行為が世間をにぎわせています。
具体的にはどういった不正なのでしょうか?

2022年に発覚した日野自動車不正まとめです。
日野自動車とは
日野自動車とはトヨタグループの中核を担ういわゆるトヨタグループ13社の一つで、トヨタ自動車の連結子会社です。
バスやトラックなど大型の車両を生産しており、日経平均株価やJPX日経インデックスの構成株式にも選ばれています。
資本金は727億円、2021年の連結売上高は1兆4,600億円と誰もが認める大企業です。
この日野自動車で2022年3月4日、エンジンに関する不正があったと発表されました。
2022年日野自動車不正の内容
今回の不正は日野自動車製エンジンに関するものですが、不正の内容は大きく2種類です。
排気ガスに関する不正
排気ガス劣化性能試験という排気ガスの浄化機能の耐久性を確認する試験で、途中でマフラーを交換し、排気ガス浄化機能が劣化していないように見せかけたという内容です。
日野自動車は販売後、マフラーが経年劣化することにより排気ガスが規制値に適合しなくなる可能性があることを認識していました。
燃費に関する不正
こちらは燃費の測定において、税制の優遇措置を受けるべく、燃費を実際よりも良くなるように誤魔化したという不正です。
この「税制」とはユーザーが支払う税金ではなく、日野自動車が国に対して支払う税金です。
度重なる燃費競争で、苦しい実情は分かりますが、燃費の不正は他メーカーでも行われており、またか、といった印象です。
加えて、この一連の不祥事は2003年頃から20年近くも行われ続けて来たとのことで、不正の対象となる車両はなんと56万7,000台にものぼります。
全社的な不正か?
日野自動車の社内調査では、一連の不正はパワートレイン実験部という一部署が主導して行ったものであり、パワートレイン実験部が他部署に相談できなかったなど、社内の連携が上手くいっていなかったことが主要因と結論付けました。
部外者からすると、本当か?とは思いますが、元自動車業界の人間としては分からないでもありません。
カーメーカーのような巨大な有名企業になると、一つ一つの部署も非常に大きく、また会社によりますが、部署を区切る壁はさらに大きいです。
試作品の評価では、開発や試作部が作った試作品を試験を行う部署に引き渡し、実験をしてもらう形になりますが、この実験に立ち会うのはなかなか難しいのです。
そもそも業務負荷が重く、試作品を渡したら、今のうちに別の機種の開発など別の業務を・・・となり易く、試験に立ち会おうとするホワイトカラーはほとんどいません。
また、実験部の試験方法がおかしい、と思っても試験担当者から「そういうものだよ」と言われたら門外漢は納得するものです。
品質保証部門も実験部と同じ試験を行う訳ではなく、試験データを参照する程度だとしたら、悪意のある意図的な改ざんを見抜くのはほぼ不可能でしょう。
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不正の影響
リコール
日野自動車は2022年3月25日、A05C(HC-SCR)エンジンを搭載する中型トラックレンジャーのリコールを届け出ました。
また、日野自動車といすゞ自動車は2022年9月9日に、プロフィア、セレガ、いすゞ・ガーラというE13Cタイプのエンジン搭載車のリコールを届け出ました。
加えて、コベルコ建機と加藤製作所も、同日にE13C-YS、E13C-YM、P11C-VNを搭載する建設機械のリコールを届け出ました。
出荷停止
当初、出荷停止となった車種はレンジャーやプロフィアといった中、大型の車両で、小型車は対象外でしたが、不正が小型車にも及ぶことが明らかとなり、2022年8月から国内向けでほぼ全ての車両が販売できない状態になっています。
2022年10月現在、販売再開のめどはたっていません。
国内に2つある日野自動車の工場のうち、中、大型のトラックを生産している茨城県の古河工場では、出荷停止の割合は全体の75%、小型トラックを生産している東京の羽村工場では51%にのぼるとのことです。
なお、両工場とも出荷停止が100%とならないのは海外向け生産は出荷停止とならないためです。
引用元:日野自動車 小型トラックでも新たな不正 出荷停止 | NHK
静観するトヨタ
日野自動車の親会社であるトヨタ自動車は以下のようなコメントを出しています。
「今回の日野自動車による信頼を損なう行為は遺憾だ。ただ、日野自動車はトヨタ自動車の子会社ではあるが、上場企業であり独立した運営をしているため、まずは同社が責任をもち、速やかに原因を解明して再発防止に向けて万全に取り組むことが望ましい」
トヨタとしてはまずは日野自動車内で対応するべきとの姿勢です。
突き放した形ですが、トヨタも怒り心頭なのか、内心は定かではありません。
不正の原因
パワハラ体質?
そもそも不正が起きた原因は役員など上層部から目標達成を強く要求されたため、とは日野自動車特別調査委員会の結論です。
東芝の巨大粉飾決算と同様の構図です。
私は自動車業界でこの構図は日産のみと思っていました。
日産は良く官僚主義的と評されますが、社員を大きく2分すると、役員とその他です。
役員が参加するかどうかで結果が変わるというのは日常茶飯事で、
「役員がやれ、と言ったらできると言っている様にしか聞こえませんよ!」
という怒鳴り声を聞いたことがあります。
当時私はジヤトコという日産の子会社に居ましたが、その怒鳴った人は日産から一時的に出向してきている人で、またえらい人を怒らせたな、と思ったことを覚えています。
「信頼回復プロジェクト」
この体質を改善しようと日野自動車は小木曽聡社長直轄で信頼回復プロジェクトを立ち上げました。

文字が多くて分かり難いですが、不祥事への補償、再発防止などごく一般的な内容です。
パワハラゼロ活動、本当にパワハラが原因なら効果が見込めますが、果たして効果のほどは。
おわりに
最近はCADなど自動車の開発ツールが非常に高度になってきており、開発競争は熾烈を極めます。
日本が勤務終了したら、東南アジア、欧州、北米、また日本・・・というように、世界中どこでも24時間開発が行われ続けているのです。
とは言っても、ユーザーを裏切る行為は許されません。
トヨタ得意のカイゼンで日野自動車も新たに生まれ変わることができるでしょうか。
それでは、ここまでお付き合い頂き、有難うございました。

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