ジヤトコが日本電産ジヤトコになる可能性はあるか?

自動車業界

積極的なM&Aを推し進め、巨大化していく日本電産。

傘下には日本電産コパルや日本電産トーソクといった様々な分野で業界No1である強力な企業が名を連ねており、グループに加入する際にはそれまでの社名に「日本電産」と追加されるのが慣例です。

一時世間をにぎわせたジヤトコをめぐる日本電産と日産の駆け引きはどうなったのでしょうか?

kassy
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日本電産ジヤトコの誕生はあるのでしょうか?

なぜ日本電産は日産傘下のジヤトコを欲しがるのか?

モーターに強みを持つ日本電産は自動車のEV化をかつてない好機と捉えており、すでにEVに必須なeアクスルというモーターなどを含めたパーツの生産を始めています。

この日本電産がなぜジヤトコを欲しがるのか?

ジヤトコは日産傘下のトランスミッションメーカーであり、母体は日産自動車のトランスミッション部門です。

1970年に本体から分離した後、マツダ、フォードとの合弁会社となったり、スズキが資本参加したり、マツダ、フォードが撤退したりと様々な過程を経て、現在では日産75%、三菱15%、スズキ10%という資本比率になっています。

引用元:ジヤトコ – Wikipedia

このように、ジヤトコは日産、三菱、スズキ向けにトランスミッションを生産しており、特にCVTにシェアは世界No1です。

加えて、最近ではeアクスルへの参入も表明しており、このままだと日本電産にとっては極めて強力な競合となるでしょう。

ゆえに、ジヤトコの持つ開発、生産技術そのものはもちろん、ライバルを減らすという意味でも、日本電産にとっては喉から手が出るほど欲しい存在なのです。

日本電産の2021年売上高は1兆6千億円、純利益1,200億円に対し、ジヤトコの2022年売上高は3,029億円、純利益104億円。

引用元:日本電産 – Wikipediaジヤトコ株式会社の情報 | 官報決算データベース (catr.jp)

規模を見ても日本電産にとってはちょうど良い会社でしょう。

日本電産らしく、ある業界のNo1企業に触手を伸ばしたと言えそうです。

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日本電産から日産へのジヤトコ買収提案

日産は否定していますが、日本電産から日産へジヤトコの買収提案がなされました。

日産の回答は「ノー」です。

引用元:焦点:日本電産と日産がジヤトコ巡り綱引き、自動車に電動化の波 | ロイター (reuters.com)

その後も、日本電産はジヤトコ買収を諦めておらず、日産副COOという最高幹部の一人であった関潤氏を日本電産社長へ招き入れていました。

このヘッドハンティングの狙いは関氏の古巣である日産から優秀な人材を引き抜くこと、もう一つはジヤトコの買収であったとされています

ドメインバックオーダー

ジヤトコ買収に立ち込める暗雲

わずか2年でヘッドハンティング人材は退社

関氏は2020年、日本電産CEOに就任しますが、2022年4月、COOに降格され、さらに同年9月に日本電産を退社してしまいます。

この間わずか2年でした。

表向きは業績悪化の責任を取る、とされていますが、真因は日本電産永守会長と関氏の軋轢と見られています。

事実、永守会長は「外部に良い後継者がいると考えたのは錯覚であり、今後外部からトップを招き入れることは一切ない」とまで言い切っています。

引用元:関潤 – Wikipedia

ジヤトコの持つ技術の中には・・・

ヘッドハンティングによる事情通の獲得には失敗し、ジヤトコ買収へ外堀を埋めることも難しくなってしまった日本電産。

それとは別に、私個人としては日産がジヤトコを手放すことは簡単ではないと考えます。

自動車は飛行機と同じように、独自のブラックボックスを持っており、それが市場不具合や自動車事故などの解析の際に必須となります。

自動車エンジニアの視点から見る池袋暴走事故

日産は2013年から「リーフ」の走行データや位置情報などいわゆるビッグデータの販売を始めており、こういったビッグデータはカーメーカーにとって極めて重要な財産の一つです。

引用元:日産自動車が始めた「ビッグデータビジネス」の狙い(1/3 ページ) – ITmedia エンタープライズ

ジヤトコは日産車両の大部分に当たるトランスミッションを製造しており、日産のビッグデータに深くかかわっています。

私がジヤトコに在籍していた当時、その車両データの解析は、市場不具合の原因究明を行う上で、必須な内容でした。

ゆえに、日産がジヤトコを手放すにしても、ジヤトコ社内にあるデータを破棄させる、どうしても手放せない社員は日産が抱え込むなどかなり複雑な手続きが必要であり、少々お荷物になることがあったにしても、容易ではないと考えます。

結論としては、日本電産ジヤトコの可能性はまだ消え去っていないが、蓋然性として高くはない、です。

おわりに

自動車の市場不具合に携わっていると、鉄やアルミで出来た金属の塊のような強固な部品が物凄い壊れ方をしてくるのを目にします。

世界を変えたモータリゼーションと言いますが、やはり油のパワーは凄いんだなと痛感したものでした。

その油から電気へと変遷が起きている今、それらを扱う企業にも同様の変遷が起きようとしています。

その変遷に対応できた企業は優良企業とされ、その企業を率いた責任者は名経営者とされます。

ジヤトコや日本電産は10年後にどうなっているのでしょうか。

どちらも日本の企業ですので、頑張って欲しいものです。

それでは、ここまでお付き合い頂き、有難うございました。

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